購入したままでは扱えない日本の道具。
今日は鑿(のみ)を仕込んだ。
家具づくりを習っている訳だけれど、道具を仕込むことから始まるのが本当に面白い。
鑿は購入したままでは、柄についている冠(名称複数あり)が金槌と当たってしまうため、それを防ぐため柄に埋め込み、木部と金槌が当たる状態に加工を施す。
冠を取り外したら、回転させながらヤスリで削っていく。
柄の中心に向かって浅い角度をつけながら削ることで、冠を押し込んだ際にギュッと締まる状態になる。
小口と水平に冠が移動していれば上手くいっている証。
冠の小口分(2mmほど)差し込めれば次の工程へ。
奥にあるちょっとした図書室に柳宗悦氏の著書「工芸の道」を見つけた。
あらためて見ても、やっぱりいい。
今一度しっかりと読み返したいと思った。
僕は工業デザインを学び受賞歴もそこそこあるけれど、いわゆるデザイン賞の受賞作というのはあまり良くないものが多い。僕が思うのだから実際そうだと多くの方も思っているはず。
なぜかを考えるに、主催者側としては賞の受賞作として、やはりすごいもの、優れたものを選ぼうという強い想いがあるはずだから、力み過ぎているというのはあると思う。
あとはやはり審査員も人間だから、コンペティションの開催意図よりも、自らの趣味趣向を反映してしまう場合もあるはず。
いずれにしても、いいものを選ぶ際には、どれだけフラットに素直な目で見れるか、感じ取れるかが大事だと思う。
仕上げの工程前に、冠の小口のバリを取る。
冠をはめ込んだら、木柄の小口を水で濡らし、滑らせるように金槌で叩いていく。
この工程はとても言葉にしにくい。
木柄の小口を冠の直径まで広がるように、中心から外側に向かって均等に叩き伸ばしていく。
ある程度叩き伸ばしたところ。
乾いたら適度に水分を与え、さらに成形していく。
冠を覆いかぶさり、帽子のようになったら完成。
鑿をこんなふうに成形して使うことをはじめて知った。
先人の知恵はすごいなと、心底思う。
木材を水と金槌で成形していくさまは、まるで鍛金のよう。
まだまだ知らない加工方法があるのだなと、木工の奥深さの片鱗を見た。