ものづくりの本

物の起源

自然選択(自然淘汰)による種の起源、いわゆる進化論がそのまま物に当てはまるのではないかと考えるのは、ものづくりを生業としている者なら当然かもしれない。動物も植物もひとつの物とするなら自然な考えとすら感じる。人は始めから人だとは思うが。
個々の正確な成り立ちは検索して頂くとして、ここでは概念における物の起源を述べてみたい。

「名を与えられたとき、一つの物としての存在が定義され、その定義から、よりその名に適した物が生まれる。」

これが、私が考える現代における総体的な物の起源。すべての物がどのように生まれてきたかはわからないが、概ねこのような経緯ではないかと考えている。あえて現代と添えたのは、私自身が言葉の無い時代を知らないため。どの時代も究極をいえばつくり出した瞬間が起源ではあるが、共有し誰もが認知するというところまでを物の起源と捉え、前述のような定義に至った。個人的に言葉と物の関係性についてはかなり興味深く、関わりも深いと考えている。
ここで注目して頂きたいことは、一度定義された後に、より適した物が生まれると考察したこと。ものづくりに試作は不可欠で、物のはじまりにおいても同じだと考えている。最初に生み出されたそれは、目的を達成することができるかもしれないが、最も適してはいないはずであり、その後につくられた物の方が遥かに優れている。
声を大にして、必ずもっと良い物があるということを伝えたい。第一線でご活躍さてれている方々の手掛けた作品や製品を拝見すると、羨ましいほど優れた物が山ほどある。このような状況になると、これ以上あるのか、という心境になる。度々経験するが、超えることができるということを知っていると、どのような物を手掛けるにしても自信を持って挑むことができる。

この事実は、人類が物をつくり続ける意味だとすら感じる。一点、あくまでその物を超えることができるという意識が大事で、その人を超えることとは話が別。ものづくりの目的は世の中をより良くすること。だから、人と比べてはいけない。

ものづくりは、物の起源を体現する行為でもある。

 

ものづくりの本 より