ものづくりの本

物の分野

すべて「物」と認識しているとは言いつつも、一般社会における通念上の分別はできた方が便利であるため、要約を記載しておくこととする。

 

【工業製品】
データや工作機械、産業用ロボットなどを駆使し、同様の品質を合理的かつ安定的に生産した物。個体差がほとんどなく、多くの人々に届けることができる素晴らしい側面もあるが、影響力が強く社会的責任も大きい。

【工芸品】
国や地域に根付く伝統的な技術によって制作された物で、機能的価値以上に情緒的価値を求める傾向があり、およそ産地がある。大半は機械を使わずに一点一点手作業によって製作される。作者の想いが込められ、手間を惜しまずつくられた物が多い。

【民藝品】
民藝とは柳宗悦氏が提唱した概念で民衆的工藝の略称。無名な民衆が安く多量につくった品であっても工芸品や美術品に匹敵する美しさを有しているとした物。簡素な工程や堅実な形といった特徴があり、無心だからこそ美が物に宿るとされる。本来作者本人が意識した物ではなく、使い手や第三者がそれと見出した物である。

【美術品】
主に絵画や彫刻がこれにあたり、美の術と表すように技術を用いて美を表現する物をさす。実用性はなく、情緒的価値そのものといえ、飾りや鑑賞の対象として保有、保管される。機能を求めない為、在り方としては自然物に近いといえる。

【骨董品】
上記の物に対し経年変化や歴史など時間による付加価値が生じた物。当時の物は二度とつくれないことから希少価値が増し高価になることがある。今回挙げた分野の中で唯一、作者が完成させることができない。

【藝術作品】
何らかの快楽の感情を得られた場合、それは藝術作品と見なすことができ、前述したすべての分野の物がこれになりうる。物そのものに留まらず、それを生み出すにあたって構築された概念による知的快楽すら含まれることもあり形式を問わない。

 

無論、物の分野はこれだけではなく、それぞれの分野の説明もこの限りではない。時代によっても意味合いが異なるので完全な説明はできないが、現時点での私の理解はこのような具合である。

 

ものづくりの本 より