ものづくりの本

想い込み

優れた物は領域を超越する。
一言では包括しきれない、いくつかの感情を想起させる概念を内包している。断定はできない。寧ろそうさせたいだけかもしれない。しかし本来、すべて「物」であり「ものづくり」である。

工業製品、民藝品、工芸品、骨董品、藝術作品等々の概要は把握しているが、物と対峙する場おいて分野の識別を行うことは、本質を感じる上では意味を成さない。その物がどうかであり、安易な先入観は必要ない。そもそも分野とは特定の概念を一纏めに定義した囲いである。しかしこれらは物理的な囲いではないため、隣同士で同じ場所を囲うことが往々にしてある。そして面白いことにそのほとんどが良い項であることが多い。
この事象を察するに、各々がその分野を愛おしく想うからである。これは分野に限らず言葉全般にいえる話ではあるが、自身にとって大切な分野や言葉には、とても深い意味付けをしているように思う。だから人に軽々しく扱われた場合に異論を唱えたくなる。

前述が事実であるとすれば、文頭の話も理解できる。この分野はこうであり、こうでもあり、こんなことまで含んでいるのだと。大切にするがゆえに、多くの意味を包括していく過程で様々な領域を横断していく。自らの想いがどんどん込められていくからだ。するとどうだろう、分野を問わず良い物には共通項があるのではないか。

だから断言する。
優れた物は、領域を超越すると。

 

ものづくりの本 より