紆余曲折ありながらも、手掛ける領域として木工と陶芸を選んだ。
他の領域は基本的に工業デザイナーとして携わろうと思う。
木工と陶芸を選んだ理由としては、素朴なものづくりがとても好きであり、中でも木と土という素材は、ものづくりの純度が高いように感じるから。
行程が簡素なものづくりは、複雑化する世界の中において、僕の目には返って魅力的に映った。
幼い頃から親しんでいた美術館でよく見かけていた作品も、木工と陶芸が多かった。絵画もよく見ていたけれど、手に取れる立体の方に興味を持った。この理由はよく分からない。でも、とにかく立体として存在する物が好きだ。
陶芸に関しては、大学卒業後に数ヵ月、地元の作家さんらのもとでいくつか作品を焼かせて頂いたことがある。そこでは電気釜、ガス窯、穴窯を経験させてもらった。電気とガスは便利だと思いつつも、薪の炎で焼く窯は一目瞭然で、やっぱりひと味もふた味も違った。
とはいえ、現状では薪の窯を所有するのは現実的ではなかったため、数ヵ月前に電気釜を購入した。まだまだ理想の器は生まれてないけれど、これが結構面白い。
「大地の器」と銘をつけてみた。
銘というよりも、今目指している方向性といった方が正しいかもしれない。今はとにかく、大地の土の力が存分に生きるような器を手掛けたい。
当初は国宝の王道である茶碗をつくっていたけれど、どうも腑に落ちなかった。どうしても生活と剥離しすぎているものを手掛けるのが、自分の中でしっくりこなかった。
そこで素直に、自分が欲しいものを手掛けようと思った。
僕が欲しい器は、お茶や水が美味しく飲める器。
飾り気のない、素朴な器だ。
方向性を整えてからは、結構いい器が出来てきている。
工業デザインでは、造形にしても仕上げにしても、自分の意図する理想を追求するけれど、陶芸では、むしろ偶然の産物、歪なものを歓迎する。
もう一度つくってと言われても出来ない、そういうものがいい。