雑なつくりの物を味があるとは思わない。それはつくるのが下手だということ。違いが分からず混同しているつくり手や使い手は意外といるのではないかと思う。この違いは両者のものづくりに対する態度が異なることから生じるため、物を購入する際にはしっかりと見極めなければならない。
まず「下手」とは字のごとく、細部を作り込むことができず、荒く雑になってしまった物を示す。それに対し「味」は形状が例え歪でも、反ってそれが魅力となり、味わい深く感じる物を称賛する表現である。なぜ似たもので天と地ほどの差が開いてしまうかといえば、それはものづくりに対する意識、心構えといった精神の差といえる。
「味」は、一生懸命ものづくりに取り組んだ末の賜物でありご褒美だ。雑に作った物とは一線を画す物。「味」を売りにしているものづくりは、本当に一生懸命丹精を込めてつくったかどうかを、ぜひとも思い返して頂きたい。
この姿勢は、素材に対する礼儀でもある。
ものづくりの本 より