富士山

日本の象徴ともいえる霊峰富士。沼津の高校への通っていた頃には毎日のように見ていたし、東京に移り住んでからも時折見かける。とても身近な存在ではあるが、富士山へ登ったのは今回が初めてだった。率直な感想としては、行った人だけがわかるものがあるということ。富士山という、知らない世界がそこにはあった。

五合目まではバスで向かった。到着し間近で富士山を見ると、空気の層がほとんどないため全く青くなく、若干の緑とごつごつとした岩肌。正直、これは富士山?といった感じだった。しっかりと体を気圧に慣らしてから登山開始。道中でふと辺りを見渡すと、一面に広がる斜面に同じ種類の植物が点在している。自然の摂理を垣間見た。途中、個人的に気になったのは地層の壁。赤茶や黄緑、薄紫といった色を持った土の重なりは、この場にいるから見分けることができるが、地肌がこんなに色で溢れているということを日常からは当然知り得なかった。唐突に、石が何個も入った穴が複数見受けられる土の壁もあったが、なぜそうなったのか想像もつかない。一方で、新たな道を整備している重機を見つけたときは何とも言えない心境になった。もちろん備え付けのロープや参道そのものも人工的に整備されたものであり、こうして安全性の高い登山をできるのはこれらのお蔭だ。ただ、調和とは何かを少し考えてしまう。とはいえ登頂したときの達成感は大きく、俗世の思案などする余地もないほど無心になれた。夏の晴れた日差しが覗いているにも関わらず、空気は少し肌寒い。火口を見下ろすと複雑に隆起する大地。日本とは思えない光景に目を奪われた。山頂には「日本最高峰富士山剣ヶ峰 三七七六米」と書かれた石碑がある。そこに自らが立ったというのは感慨深い。

日本最高峰富士山剣ヶ峰 三七七六米

体感は言葉を超える。