ものづくりの本

アートとデザイン

アートは自己表現であり、デザインは制約表現。
問題提議がアートだとすれば、デザインは問題解決。
アートは主観的でありデザインは客観的ともいえる。

とはいっても、このような仕分けは教科書的な意味合いが強く、世の中には自己表現のデザインもあれば制約を設けたアートも存在する。ただし、展示会や発表の際には知識が先行するお客様もいるため、この教科書的な意味合いを知っているということが大切なこともある。もう少し深追いをすると、教科書的にいえば、アートとデザインでは物が生まれるまでのプロセスが全く異なる。
アートは一個人で完結でき、デザインは多くの場合複数人を必要とする。要望の強いパトロンが存在する場合もあるが、アートは基本的に自己完結で良いので誰かを説得する必要は無く、本人が納得した時点でそれは成功であるのに対し、デザインには多くの場合クライアントが存在し、意図を説明しクライアントが納得した上で、なおかつその先にいるお客様にも喜ばれることで晴れて成功といえる。
この点においては、アートの方が純粋性が高く好感が持て、さらにいえば、デザインや建築などクライアントを要する道へ進んだ多くの学生も、本当は自己表現をしたいのではないかとすら思っている。こればかりは好みであり、もちろん双方の想いが合致することも有り得る他、お客様の想いを形にすることのほうが好きという方も当然いるためこれ以上は議論しない。

話を戻すと、私の見解としては、良いアートはデザインに近づき、良いデザインはアートに近づく。
例えば、ピエト・モンドリアン氏の描いた赤・青・黄のコンポジションという作品は、抽象絵画ではあるがイラストレーターで描いたような明瞭なわかりやすさがあり、デザインであるともいえる。逆に日本の国旗である日章旗は太陽を図案化したデザインであるが、現代アートとしても成り立つように思う。

話題としておきながら結局のところ、アートかデザインかといった話は大してこだわる必要はない。
好きな言葉がどちらであるかだ。

 

ものづくりの本 より